体位は、主に左側を向いて、特に女性では、おしりが丸出しにならないように、患部だけがみえるような穴の開いた布を使います。診察は、機械を使う前に優しく触診をして、痛みや、緊張の度合いをみます。直腸診も行ない直腸内の出血や腫瘍、腫瘤の有無をみる大切な診察もおこないます。肛門鏡は初診ではなるべく痛みがほとんどない筒型のものを使います。宜しければ、リアルタイムで肛門鏡の画像を見て説明することもあります。
痔瘻、裂肛、血栓性外痔核、肛門周囲膿瘍、肛門そうよう症等も治療致しますが、診断が御自分の判断と多々相違がある場合がありますので、まず、適切な診察が必要です。ほとんどの場合、診断は、その場で付きますが、症例によっては、経過をみて診断がつく場合もありますし、特に裂肛や痔核では肛門鏡(疼痛など考慮し)の種類を変えての診察も重要となります。痔瘻の診察では、触診が大切な診察となりますが、補助的に超音波診断やMRIも利用します。液や、血が出たり、腫れて、いつも痛い、座っているときだけ痛い、眠れないなどの情報も同じぐらい大切です。
特に痔核の脱出の症状は、病院での診察では、認めず自宅などの病院外で、あるいは、お産後にのみ症状が現れる場合があります。その場合、スマートフォンなどにより、自ら撮られた画像のみが、重要な診察の情報となりうります(実際、患者様から、持参して治療の選択に大きく影響している例もございます)。
痔核に限らず、大切な症状と思われましたら、画像の情報を持参していただければ、大変助かります。
(PS:肛門科医の中で、この重要性を訴え始め、熱心に地方新聞で指導されている先生もおります:笹口政利先生、誠心会吉田病院)
思ったより、さほど重大でない場合もあります。ほとんどの場合一度の診察で診断がつき、病状についてお話しを聞き(希望により画像を見ていただき)心配から解消される時も多々あります。
突然肛門にできもの、おでき、すわると違和感、歩いて痛い、突然の出血などで来られます。便秘、下痢、仕事によるかんづめ状態(動かない)で痔の血管内に血の塊ができて、腫れあがり痛くなる状態です。
治療はほとんど内服、外用剤で経過を見ますが、症状の強い場合は、相談により局所麻酔で血栓除去術を行います。
肛門の回りや、その奥に膿がたまる状態で肛門の持続的な痛みで、痛みが強くなってきて、仕事ができない、眠れない、熱などで来られます。触診や見ただけで診断がつきますが、超音波検査もして程度、場所を判断します。*一見何ともないように見える場合もあります。その場合、診断が難しく、経験がない施設では、「痔です。軟膏で様子を見てください」となることが多いのが現状です。
治療は、全例即、局所麻酔で排膿処置をします(肛門疾患ガイドラインでは、いかなる状態でも排膿処置)。膿瘍の程度、位置により腰椎麻酔が必要となったりビニールのチューブを入れることもあります。
経過:ほとんどは、これでよくなりますが、半数近くで痔瘻となり根治術が必要になりますので、その後の診察がかなり重要となります。
日本では2013年頃より、メディアでも取り上げられ始めている治療で、ALTA(アルミニウム水和物タンニン酸塩) :ジオン®という薬液を痔核内に注射して無菌性の炎症を起こして、組織を硬化、縮小させる治療ですで、以前の数年しか持続しなかったアーモンドオイル(PAO)と違ってかなりの改良ものです。2005年より保険適応となり、すでに60万人以上方々がこの治療を受けられていて、副作用等のデータも整備され安全なものとされています。
従来の結紮切除という、切り取る手術に比べ、体への負担が少なく、手術後の排便時の疼痛と、出血がほとんどないのが特徴です。また、切開に伴う瘢痕による引きつれの後遺症がない事も安心できます。入院も必要なく、局所麻酔で可能ですが(ほとんどの方は術中の緊張や苦痛を考慮し仙骨硬膜外麻酔を勧めています)なんといっても、術後翌々日には仕事に戻るができます。
外側の痔核はジオンが適応になりませんので、従来の結紮切除を併用してますが、術後痛みが強い声が少なくありません。そこで、当院では、外側の痔核は小切開し痔核を退治し、内痔核にはジオン注射を行い切除する範囲を最小限にして術後の排便時の痛みを軽減する工夫をしています。
世界の標準術式ですが、術後の排便時の疼痛が軽くはないのと、出血のリスクが少なからずありますが、根治性が高いのが特徴です。出勤は、5-8日目ぐらいが平均的でしょう。
分離結紮術、ゴム輪結紮術
ゴム輪結紮術:内痔核だけが対象となりますが、痔核にゴム輪をかけて痔核を壊死させて痔核を取り除く治療です。痛みは、ほとんどなく、ほとんどの場合麻酔なしでもできる処置です。
分離結紮術:痔核の根を糸で結び痔核を壊死させ取り除く方法で切らず治しますので、切除より痛みが軽減され出血のリスクが少ないのが特徴です。
痔瘻の治療は、基本的に手術となります(肛門疾患ガイドライン2020)。
最も根治性が高く(ガイドラインではこの方法だけ推奨度A)再発例は5-7%(Rosa G. Lolli P など)、低い法ですが括約筋が犠牲になるのが通例です。
インド(Dr.Sushuta Samhita, 1975)、日本では江戸時代からあった治療と聞きますが、最近見直されてきて普及してます。瘻管にゴムを入れて時間をかけて引っ張り上げて瘻管を切って行く方法で、ある程度括約筋の保護が可能で、再発も開放法に近いデータとなっております。(ガイドライン推奨度B)
専門でない施設でよくされているかもしれませんが(以前~今?)理想的な方法ではありますが、再発は少なくありません、専門の施設では状況によってあるいは、得意としている外科医には選択されているかもしれません。(ガイドライン推奨度B)
国内では保険適応外で海外でも治療成績は安定しておりません(再発3~8割:海外)当院ではやっておりません。
タイのDr(Rojanassakul A, 2007 )で瘻管の一部を切断し、括約筋にほとんど触れない手術が近年注目されました。 2014年 横浜でその先生の話を聞きました。熱烈なしゃべりで印象的でした。しかし再発は少なくなく、最近は従来の手術法と組み合わせた工夫をしているようです。
当院での痔瘻オペ:佐原力三朗先生(牧田病院)は肛門機能の温存術式を行っておりますが、それに習い、当院では、可能なかぎり、機能性をも重視した手術を行なっており 内括約筋をも温存した手術では再発例はほぼありませんでした。2017年から当院での主たる肛門の手術例の約50%は痔瘻です(一般的には、痔瘻の手術の割合は、肛門手術の10-20%です)。
排便時出血や、痛みで驚いてこられる方がいますが、症状がでてすぐ来られるかたは、急性の裂肛の方が多く、痛みは比較的強いのですが、診断がつき、安心され原因となっている便秘や、刺激の強い食事などが、指導により修正されますと、よい経過の方が多いかと思います。
しかし、肛門狭窄をきたしている場合、軟膏治療でも奏功しない場合、あるいは数年にわたり、症状があったにも関わらず、そのまま放置されていた例では、治療困難ともなりうります。そのような例では、手術の対象となります。手術では、便秘や下痢など、排便習慣が原因としてありますので、手術後も再発がありうり、かなりの狭窄が進んでからのでの手術は複雑となりうりますので、早めの受診、治療が勧められます。実際の手術後は、しばらくぶりの快適な排便に戻り苦痛から逃れられた様子は隠せないのが現状です。
デジタル肛門鏡を手術中や診察中にも活用し、希望により、画像を提供し御納得の上、手術をすすめます。 例えば、病状によっては、術式の選択(例:注射にするか切除にするか)を要所、要所で画像見ていただき、御相談の上、決める場合もあります
先ず、原因となる消化液の元となる痔核の脱出や、炎症そのものである痔瘻などがないか診察をします。診察と同時に真菌、細菌の検査し、適切な軟膏などの治療を選択して経過観察します。その間、皮膚所見の変化が重要となりますので、画像を記録し、その変化を見ます。なかには原因不明の湿疹もありますが、ほとんど軟膏や生活指導で改善していきます。
内容 | 2020 | 2019 | 2018 | 2017 | 2016 |
---|---|---|---|---|---|
痔核 Hemorrhoids | 52 | 55 | 43 | 49 | 67 |
痔瘻 Anal fistulae | 38 | 40 | 37 | 36 | 36 |
裂肛 Anal fissures | 10 | 12 | 5 | 4 | 12 |
肛門周囲膿瘍.血栓摘出 Peri proctologic abscess, external Hemmorrhoids thrombosis |
89 | 97 | 97 | 103 | 115 |
他のオペ other surgeries | 23 | 32 | 27 | 37 | 12 |
内視鏡的大腸ポリープ切除 Endoscopic polypectomy | 89 | 68 | 48 | 47 | 36 |
大腸内視鏡 Colonoscopy | 176 | 171 | 176 | 165 | 122 |
胃十二指腸ファイバー | 124 | 119 | 141 | 116 | 103 |
2019/12時点
*The others: skin mass (皮下腫瘤) and Condyloma acuminatum and so on.